UTC(USNO)のタイムスケールと長期安定性を手元に実現
5071A セシウム周波数標準を規律制御
5071Aの安定度は非常に優れていますから,優秀なタイミング用 GPS 受信機と規律制御アルゴリズムを使わないかぎり 5071A の性能を悪化させることにしかなりません. Meridian II の持つ GPS 受信機は,RTIC (リアルタイム電離層遅延補正)オプションと正確な測位により,5071A の性能を劣化させることのない精度と安定度の GPS タイミング測定を行うことを可能にして,UTC(USNO) か GPS のリファレンスタイムスケールの長期安定性を実現します. これを達成するための制御ループの「スウィートスポット」は,公表されている 5071A の実測性能値と,RTICオプションを搭載した Meridian II の NISTでの実測値から決められます.
5071A セシウム周波数標準
他の自走する時計と同じように,5071A も他の独立したタイムスケール、例えば UTC(USNO) に同期し続けることはできません. 初期の校正誤差に加えて,ランダムで発散するフリッカー周波数変調の影響により,必然的に位相が UTC からドリフトしてしまうからです. UTC(USNO) タイムスケールとの同期を長期に渡り保つには 5017A を規律制御しなければなりません.これには GPS を利用して UTS(USNO) と 5071A の位相差を測定して,その測定結果に基づき 5071A の周波数を調整します. この観点では,たとえ 5071A であっても Meridian-II に組み込まれている発振器と変わりありません.
5071A はセシウム標準の運転に影響を与えることなく,VOCXOだけを規律制御できるように作られており,このオプションはこの5071Aの機能を使いUTC(USNO)のタイムスケールに5071Aを同期させます.以下は5071Aのマニュアルの抜粋です.
Steering is accomplished by changing the ratio between the VCXO output frequency and the cesium transition frequency through a digital synthesizer. The reference frequency of the cesium beam tube is not disturbed. This system has the following advantages over previous cesium beam frequency standards:
- No change in stability of steered output over un-steered output
- Offset from un-steered frequency is precisely known
- Fast change to the precise steered frequency
- Fast and precise return to the original frequency
As a result of knowing the exact amount that the 5071A has been steered, its value as an independent frequency source in an ensemble is maintained.
Meridian II の GPS 受信機
Meridian II の持つ GPS 受信機は,内蔵する発振器を外部の発振器に位相同期させることができます. これにより、 5071A の位相を GPS (究極には UTC(USNO)に対して) もっとも精度良く安定した方法で測定することを可能にします. 一方、5071A は非常に細かい分解能(10の15乗分の6.3)で制御できる機能を持っています. これらの機能を組み合わせることで, UTC(USNO)の並外れた性能を,非常に優れた 5071A の中長期安定性と UTC(USNO) か GPS タイムスケールの長期精度と安定性から実現できます. 三次フェーズロックアルゴリズムが,UTC(USNO)かGPSかいずれかに対するフリッカー周波数変調からホワイト位相変調 5071A の長期のアラン偏差を低減します.
5071A セシウムコントロールモジュールは,Meridian II のオプションとして用意されています. 詳しくは5071Aセシウムコントロールモジュールのデータシートと Meridian II GPS 周波数標準のマニュアルをお読みください.
5071Aとの接続は簡単です
Meridian-II の電源を切り, 5071A の電源を入れておきます. 5071Aのフロントパネルを操作して RS-232 シリアルポートを 9600,8,non-parity,1 に設定し,CONFIG->STORE で設定を保存します. 5071Aが NORMAL モードであることを確認します.モジュールの Cesium Control I/O コネクタと 5071A の RS232C コネクタをモジュールに付属するシリアルケーブルで接続します. モジュールの 10MHz Sine Input と 5071A の Port 1 をモジュールに付属する BNC-N 同軸ケーブルで接続します. 以上の 5071A の設定とケーブルの接続が終わったら Meridian-II の電源を入れます. Meridian-II のパネルを操作してオシレータータイプが Cesium ないしは US-Cesium になっていることを確認します.更にスクロールすると 5071A のステータスが表示されます. CLI コマンド hp5071atat も使えます. 制御ループの平均化時間が十分に長くなり,UTCとの同期が安定するまで数週間かかります.